ATC(Anatomical Therapeutic Chemical)分類システムは、世界保健機関(WHO)が開発・管理する医薬品の国際的な分類体系です。医薬品の活性成分を、作用する器官またはシステム(解剖学的)、治療的・薬理学的・化学的性質に基づいて5階層の階層構造で分類します。このシステムは1970年代にノルウェーで開発され、現在はノルウェー公共衛生研究所内のWHO薬物統計方法学協力センターが管理しています。
ATC分類の最大の特徴は、医薬品を14の解剖学的主グループに分け、それぞれをさらに治療学的サブグループ、薬理学的サブグループ、化学的サブグループ、そして最終的に化学物質レベルまで細分化している点です。たとえば糖尿病治療薬メトホルミンは「A10BA02」というコードで表され、A(消化器系・代謝)、10(糖尿病用薬)、B(血糖降下薬)、A(ビグアナイド系)、02(メトホルミン)という階層構造を持っています。
この分類システムは、薬物使用統計の国際的比較、疫学研究、副作用モニタリング、処方分析、医薬品開発支援などに広く利用されています。規定日用量(DDD)という単位と組み合わせることで、各国の医薬品消費量を客観的に比較することが可能となり、医療政策の立案や医薬品の適正使用推進に重要な役割を果たしています。また、ATCvetという獣医用の並行分類システムも存在し、動物用医薬品の分類にも応用されています。
ATC分類の使用にあたっては、商業目的での複製・配布が禁止されており、引用する際にはWHO薬物統計方法学協力センターへの言及が必要です。最新のATC/DDD IndexはWHO協力センターのウェブサイトで公開されており、2026年版が現在適用されています。