生物多様性ホットスポットは、1988年に英国の生態学者ノーマン・マイヤーズが提唱した概念で、固有種の豊かさと生息地喪失の深刻さという2つの厳格な基準を満たす地域として選定されています。現在、Critical Ecosystem Partnership Fund (CEPF) により36のホットスポットが公式に認定されており、これらの地域は地球の陸地のわずか2.5%を占めるのみですが、世界の植物種の50%以上、陸生脊椎動物の43%が生息する驚くべき生物多様性を秘めています。
各ホットスポットは元の自然植生の70%以上を失っており、絶滅の危機に瀕しています。この厳しい現状から、これらの地域は保全活動の最優先地域として位置づけられています。36のホットスポットは北米から南米、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアに広がり、熱帯アンデスをはじめとする山岳地帯や、マダガスカル、カリブ海諸島などの島嶼生態系、地中海流域のような温帯地域まで多様な環境を含んでいます。
特に注目すべきは、2016年に36番目のホットスポットとして認定された北米大西洋岸平原です。この地域はメキシコ北部からマサチューセッツ州まで広がる沿岸平原で、1,500種以上の固有維管束植物が生息し、生物多様性の重要性が新たに認識された例となっています。また、日本も2017番目のホットスポットとして認定されており、ニホンザルや古代の固有系統を持つ多くの種が生息する重要な地域です。
2025年10月には、IUCN(世界自然保護連合)とヘンペル財団により、25年ぶりの包括的な見直しプロジェクトが開始されました。これにより、IUCNレッドリストの最新データやSTAR指標、EDGE(進化的に独特な絶滅危惧種)の観点が組み込まれ、今後リストに変更が入る可能性があります。生物多様性ホットスポットの保全は、地球の生態系の未来を左右する重要な課題であり、国際的な連携と持続可能な開発の実現が求められています。