概要

生物多様性ホットスポット

生物多様性ホットスポットは、1988年にノーマン・マイヤーズが提唱した概念で、固有種の豊かさと生息地喪失の深刻さを基準に選定された36の地域です。これらの地域は地球の陸地のわずか2.5%を占めるのみですが、世界の植物種の50%以上、陸生脊椎動物の43%が生息しています。各ホットスポットは元の自然植生の70%以上を失っており、保全の緊急性が高いとされています。Critical Ecosystem Partnership Fund (CEPF) により認定・管理されています。

生物多様性 保全 生態系 絶滅危惧種 環境保護 CEPF 固有種
コード スラッグ 名称 概要 countries region
01 tropical-andes 熱帯アンデス 世界で最も生物多様性が豊かなホットスポットです。 ベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、北アルゼンチン 南米
02 tumbes-choco-magdalena トゥンベス・チョコ・マグダレナ 南米太平洋岸の生物多様性豊かな地域です。 パナマ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ガラパゴス諸島 南米
03 madrean-pine-oak-woodlands マドレアン松樫林 北米南部の松樫林生態系です。 アメリカ(アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス)、メキシコ 北米
04 cerrado セラード ブラジルの広大なサバンナ生態系です。 ブラジル、ボリビア、パラグアイ 南米
05 chilean-winter-rainfall-valdivian-forests チリ冬季降雨・バルディビア森林 チリとアルゼンチンの温帯雨林です。 チリ、アルゼンチン 南米
06 atlantic-forest 大西洋岸森林 ブラジル東海岸の豊かな森林生態系です。 ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ 南米
07 mesoamerica メソアメリカ 中米の豊かな森林生態系です。 メキシコ、ベリーズ、グアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ 中米
08 caribbean-islands カリブ海諸島 カリブ海の島々の生態系です。 バハマ、キューバ、ジャマイカ、ハイチ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、その他カリブ海諸島 中米・カリブ
09 california-floristic-province カリフォルニア植物区 北米西海岸の地中海性気候地域です。 アメリカ(カリフォルニア、オレゴン)、メキシコ(バハカリフォルニア) 北米
10 north-american-coastal-plain 北米大西洋岸平原 2016年に認定された36番目のホットスポットです。 アメリカ、メキシコ 北米
11 guinean-forests-west-africa ギニア森林 西アフリカ海岸の森林生態系です。 ベナン、コートジボワール、ガーナ、ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ、トーゴ アフリカ
12 cape-floristic-region ケープ植物区 南アフリカ南端の植物多様性豊かな地域です。 南アフリカ アフリカ
13 succulent-karoo 多肉カルー 南アフリカの多肉植物が豊かな地域です。 南アフリカ、ナミビア アフリカ
14 maputaland-pondoland-albany マプタランド・ポンドランド・オールバニ 南アフリカ南東部海岸の生態系です。 南アフリカ、モザンビーク、エスワティニ アフリカ
15 coastal-forests-eastern-africa 東アフリカ海岸森林 アフリカ東海岸の森林生態系です。 ケニア、タンザニア、モザンビーク、ソマリア アフリカ
16 eastern-afromontane 東アフリカ山地 東アフリカの山岳地帯の生態系です。 エチオピア、ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、コンゴ民主共和国、ザンビア、マラウイ、ジンバブエ、モザンビーク アフリカ
17 horn-of-africa アフリカの角 北東アフリカの乾燥地帯の生態系です。 エチオピア、エリトリア、ジブチ、ソマリア アフリカ
18 madagascar-indian-ocean-islands マダガスカル・インド洋諸島 マダガスカル島と周辺島々の生態系です。 マダガスカル、コモロ、セーシェル、モーリシャス、レユニオン アフリカ
19 mediterranean-basin 地中海流域 世界で最も植物多様性が豊かな地域です。 スペイン、ポルトガル、フランス、イタリア、ギリシャ、トルコ、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト、イスラエル、レバノン、シリア、他 ヨーロッパ・アジア・アフリカ
20 caucasus コーカサス ヨーロッパとアジアの境界の山岳地帯です。 ロシア、グルジア、アゼルバイジャン、アルメニア、トルコ、イラン ヨーロッパ・アジア
21 irano-anatolian イラノ・アナトリア 中東の山岳地帯の生態系です。 イラン、アゼルバイジャン、トルコ、アルメニア、イラク、トルクメニスタン アジア
22 mountains-of-central-asia 中央アジア山岳地帯 中央アジアの高山地帯の生態系です。 カザフスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、中国 アジア
23 western-ghats-sri-lanka 西ガーツ・スリランカ インド半島西部とスリランカの生態系です。 インド、スリランカ アジア
24 himalaya ヒマラヤ 世界最高峰を含む山岳生態系です。 インド、中国、ブータン、ネパール、パキスタン、ミャンマー、アフガニスタン、バングラデシュ アジア
25 mountains-of-southwest-china 中国南西部山岳地帯 中国南西部の山岳生態系です。 中国、ミャンマー アジア
26 indo-burma インド・ビルマ 世界最大のホットスポットの一つです。 インド、バングラデシュ、中国、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、マレーシア アジア
27 sundaland スンダランド 東南アジアの島々と半島の生態系です。 インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、タイ アジア
28 wallacea ワラセア インドネシア東部の島々の生態系です。 インドネシア、東ティモール アジア
29 philippines フィリピン フィリピン諸島の生態系です。 フィリピン アジア
30 japan 日本 日本列島の生態系です。 日本 アジア
31 southwest-australia 南西オーストラリア オーストラリア南西部の地中海性気候地域です。 オーストラリア オセアニア
32 east-melanesian-islands 東メラネシア諸島 オーストラリア北東の島々の生態系です。 ソロモン諸島、バヌアツ、パプアニューギニア オセアニア
33 new-zealand ニュージーランド ニュージーランド諸島の独特な生態系です。 ニュージーランド オセアニア
34 new-caledonia ニューカレドニア 世界最小のホットスポットです。 フランス(ニューカレドニア) オセアニア
35 polynesia-micronesia ポリネシア・ミクロネシア 南太平洋の島々の生態系です。 フィジー、サモア、トンガ、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオ、その他太平洋諸島 オセアニア
36 forests-of-east-australia 東オーストラリア森林 オーストラリア東海岸の森林生態系です。 オーストラリア オセアニア

生物多様性ホットスポットは、1988年に英国の生態学者ノーマン・マイヤーズが提唱した概念で、固有種の豊かさと生息地喪失の深刻さという2つの厳格な基準を満たす地域として選定されています。現在、Critical Ecosystem Partnership Fund (CEPF) により36のホットスポットが公式に認定されており、これらの地域は地球の陸地のわずか2.5%を占めるのみですが、世界の植物種の50%以上、陸生脊椎動物の43%が生息する驚くべき生物多様性を秘めています。

各ホットスポットは元の自然植生の70%以上を失っており、絶滅の危機に瀕しています。この厳しい現状から、これらの地域は保全活動の最優先地域として位置づけられています。36のホットスポットは北米から南米、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニアに広がり、熱帯アンデスをはじめとする山岳地帯や、マダガスカル、カリブ海諸島などの島嶼生態系、地中海流域のような温帯地域まで多様な環境を含んでいます。

特に注目すべきは、2016年に36番目のホットスポットとして認定された北米大西洋岸平原です。この地域はメキシコ北部からマサチューセッツ州まで広がる沿岸平原で、1,500種以上の固有維管束植物が生息し、生物多様性の重要性が新たに認識された例となっています。また、日本も2017番目のホットスポットとして認定されており、ニホンザルや古代の固有系統を持つ多くの種が生息する重要な地域です。

2025年10月には、IUCN(世界自然保護連合)とヘンペル財団により、25年ぶりの包括的な見直しプロジェクトが開始されました。これにより、IUCNレッドリストの最新データやSTAR指標、EDGE(進化的に独特な絶滅危惧種)の観点が組み込まれ、今後リストに変更が入る可能性があります。生物多様性ホットスポットの保全は、地球の生態系の未来を左右する重要な課題であり、国際的な連携と持続可能な開発の実現が求められています。