概要

クラウドデプロイメントモデル

クラウドデプロイメントモデルは、NIST SP 800-145で定義されたクラウドコンピューティングのインフラストラクチャ運用形態を示す分類です。パブリッククラウド、プライベートクラウド、コミュニティクラウド、ハイブリッドクラウドの4つの基本モデルと、マルチクラウドという派生モデルがあります。各モデルはインフラストラクチャの所有者、利用者、運用形態の違いにより分類され、組織のセキュリティ要件、コスト構造、コンプライアンスニーズに応じて選択されます。これらのモデルは、クラウドコンピューティングの標準化と、組織のクラウド戦略立案において重要な基盤となっています。

クラウドコンピューティング NIST パブリッククラウド プライベートクラウド ハイブリッドクラウド マルチクラウド ITインフラ
コード スラッグ 名称 概要 keyCharacteristics providerExamples deploymentOptions useCases keyCapabilities advantages
1 public-cloud パブリッククラウド 一般公開され、複数の顧客で共有されるクラウドインフラです。 ["従量課金制","高いスケーラビリティ","共有インフラ","最小限の管理負担"] ["AWS","Microsoft Azure","Google Cloud Platform","Oracle Cloud","IBM Cloud"]
2 private-cloud プライベートクラウド 単一組織専用に提供される専用クラウドインフラです。 ["専用インフラ","完全な制御","高度なセキュリティ","カスタマイズ可能"] ["オンプレミス","ホステッド(サードパーティー運用)","マネージドプライベートクラウド"]
3 community-cloud コミュニティクラウド 共通の関心事を持つ複数組織で共有するクラウドインフラです。 ["コミュニティ専用","コスト共有","業界特化型","協調的運用"] ["医療機関間の電子カルテ共有","政府機関の共同システム","研究機関のデータ共有","金融機関の業界共通基盤"]
4 hybrid-cloud ハイブリッドクラウド プライベートクラウドとパブリッククラウドを統合したモデルです。 ["複数環境の統合","柔軟性","セキュリティと拡張性のバランス","複雑な管理"] ["クラウドバースト","データポータビリティ","災害対策","柔軟なワークロード配置"]
5 multi-cloud マルチクラウド 複数のクラウドプロバイダーのサービスを同時に利用するモデルです。 ["複数プロバイダー","戦略的分散","高い可用性","複雑な運用管理"] ["ベンダーロックイン回避","ベストオブブリードサービス","地理的冗長性","交渉力の向上"]

クラウドデプロイメントモデルは、NIST(アメリカ国立標準技術研究所)のSP 800-145で定義された、クラウドインフラストラクチャの運用形態とアクセス方法を分類する枠組みです。パブリッククラウド、プライベートクラウド、コミュニティクラウド、ハイブリッドクラウドの4つの基本モデルと、近年広く普及しているマルチクラウドという派生モデルがあります。

各モデルは、インフラストラクチャの所有者、利用者の範囲、運用方法の違いによって分類されます。パブリッククラウドはAWSやAzureなどのプロバイダーが運用し複数顧客で共有する形態であり、コスト効率とスケーラビリティに優れています。一方、プライベートクラウドは単一組織専用のインフラであり、セキュリティとカスタマイズ性が高い一方でコストも高くなります。ハイブリッドクラウドはこれらを組み合わせ、機密データはプライベート側に、拡張性が必要なワークロードはパブリック側に配置することで、セキュリティと柔軟性のバランスを実現します。

モデルの選定は、組織のセキュリティ要件、コスト構造、コンプライアンス要件、既存システムとの統合必要性など、多面的な観点から行う必要があります。スタートアップや変動性の高いワークロードにはパブリッククラウドが、機密データを扱う金融や医療機関にはプライベートクラウドまたはハイブリッドクラウドが適しています。また、ベンダーロックインを回避し複数のベストサービスを組み合わせたい場合はマルチクラウド戦略が有効です。

2025年現在、企業の89%がマルチクラウド戦略を採用し、75%がハイブリッドおよびマルチクラウド戦略を導入していると報告されています。クラウド市場は1.3兆ドル規模に達する見込みであり、適切なデプロイメントモデルの選択は企業のIT戦略においてますます重要になっています。