概要

精神疾患の分類

精神疾患の分類は、世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類第11版(ICD-11)に基づき、精神、行動および神経発達障害を体系的に分類したものです。神経発達障害、統合失調症、気分障害、不安障害、強迫症関連障害、ストレス関連障害、解離障害、摂食障害、物質使用障害、人格障害など、主要な精神疾患カテゴリーを網羅しています。臨床診断、医療統計、保健医療政策の基盤として世界中で利用されています。

精神疾患 ICD-11 WHO 精神保健 うつ病 不安障害 統合失調症 医療分類
コード スラッグ 名称 概要 icd11Range
6A0 neurodevelopmental-disorders 神経発達障害 発達期に発症し、個人の発達に著しい障害をもたらす疾患群です。 6A00-6A0Z
6A2 schizophrenia-primary-psychotic-disorders 統合失調症または他の一次性精神病性障害 現実との接触が失われ、妄想、幻覚、思考障害などを特徴とする障害群です。 6A20-6A5Z
6A6 catatonia 緊張症 運動機能の著しい変化を示す症候群です。 6A40-6A4Z
6A7 mood-disorders 気分障害 感情的な状態の著しい変化を特徴とする障害群です。 6A60-6A8Z
6B0 anxiety-fear-related-disorders 不安または恐怖関連障害 過度の恐怖や不安、および関連する行動の障害を特徴とします。 6B00-6B0Z
6B2 obsessive-compulsive-related-disorders 強迫症または関連障害 強迫的な思考や行動を特徴とする障害群です。 6B20-6B2Z
6B4 disorders-associated-with-stress ストレスに特異的に関連する障害 ストレッサーに曝露した後に発症する障害群です。 6B40-6B4Z
6B6 dissociative-disorders 解離障害 意識、記憶、アイデンティティ、知覚の統合に障害をきたす疾患群です。 6B60-6B6Z
6B8 feeding-eating-disorders 摂食障害 食行動や摂食に関連する著しい障害を特徴とします。 6B80-6B8Z
6C4 disorders-due-to-substance-use 物質使用による障害 精神作用物質の使用に起因する精神・行動障害です。 6C40-6C4Z
6C5 impulse-control-disorders 衝動制御障害 衝動的な行動を抑制できない障害群です。 6C50-6C5Z
6C9 disruptive-dissocial-disorders 秩序破壊的または非社会的行動障害 行動問題や他者の権利を侵害する行動を特徴とする障害群です。 6C90-6C9Z
6D1 personality-disorders 人格障害 自己と他者の経験に関する認知・感情・対人関係のパターンの著しい偏りです。 6D10-6D1Z
6D3 paraphilic-disorders パラフィリア障害 通常の性的対象や活動とは異なる強い性的関心を特徴とする障害群です。 6D30-6D3Z
6D5 factitious-disorders 作為性障害 患者本人による症状や障害の作為的な誘導を特徴とする障害群です。 6D50-6D5Z

精神疾患は、世界中で数億人の人々に影響を与える重要な健康課題です。世界保健機関(WHO)の統計によると、2021年時点で世界人口の約7人に1人、つまり約11億人が精神疾患を抱えて生活しています。精神疾患は、個人の生活の質を著しく低下させ、社会経済的な負担も大きくなっています。

精神疾患を体系的に理解するために、WHOは国際疾病分類(ICD-11)において「精神、行動および神経発達障害」という章を設けています。この分類は、臨床診断、医療統計、保健医療政策の基盤として世界中で利用されています。ICD-11は2019年に世界保健総会で承認され、2022年1月1日から正式に施行されました。

ICD-11の精神疾患分類では、従来のICD-10におけるFコード(F0-F9)に代わり、6Aから6Dのブロック構造が採用されています。主な変更点として、ライフスパンアプローチの導入により児童期・青年期の障害を成人の体系に統合したこと、神経発達障害の概念拡大、そして人格障害のカテゴリー分類から多次元的アプローチへの移行などが挙げられます。また、複雑性PTSDや持続的複雑性哀傷障害などの新たな診断カテゴリーも追加されました。

主な精神疾患カテゴリーとしては、神経発達障害(自閉症スペクトラム障害、ADHDなど)、統合失調症などの精神病性障害、気分障害(うつ病、双極性障害など)、不安障害、強迫症関連障害、ストレス関連障害、解離障害、摂食障害、物質使用障害、人格障害などがあります。これらの疾患は、生物学的要因と環境要因の複合的な作用により発症すると考えられており、適切な治療と支援により症状の改善や生活の質の向上が可能です。

精神疾患の治療には、薬物療法、心理療法、社会的支援などの包括的なアプローチが重要です。特に、早期の発見と介入が予後を改善する上で極めて重要です。近年では、精神保健への理解が深まり、求めやすい環境が整いつつありますが、依然としてスティグマ(偏見)が存在することも事実です。正確な知識の普及と、精神疾患のある人々への理解と支援が、より良い社会を築くために不可欠です。