概要

植物の科名・属名

植物の科名(Family)と属名(Genus)は、植物分類学における重要な分類階級です。科名はラテン語の語尾「-aceae」で終わり、属名は科名の由来となるタイプ属(type genus)に基づいています。APG IV分類体系(2016年)では、被子植物は64目416科に分類され、各科は形態学的特徴や分子系統学的証拠に基づいて定義されています。日本では、バラ科(Rosaceae)、菊科(Asteraceae)、マメ科(Fabaceae)などが代表的な科として知られています。

植物分類学 科名 属名 APG IV 被子植物 植物学 学名
コード スラッグ 名称 概要 order representativeGenera typeGenus
01 rosaceae バラ科 バラ科は、バラ、リンゴ、サクランボなどを含む大きな科です。 Rosales ["Rosa","Malus","Prunus","Fragaria","Sorbus"] Rosa
02 asteraceae 菊科 菊科は、ヒマワリ、タンポポ、キクなどを含む最大の被子植物科です。 Asterales ["Helianthus","Taraxacum","Chrysanthemum","Lactuca","Artemisia"] Aster
03 fabaceae マメ科 マメ科は、インゲンマメ、エンドウ、ダイズなどの豆類を含む科です。 Fabales ["Phaseolus","Pisum","Glycine","Arachis","Trifolium"] Faba
04 poaceae イネ科 イネ科は、イネ、コムギ、トウモロコシなどのイネ科植物を含む科です。 Poales ["Oryza","Triticum","Zea","Hordeum","Saccharum","Bambusa"] Poa
05 lamiaceae シソ科 シソ科は、シソ、ハッカ、ラベンダーなどを含む芳香性の科です。 Lamiales ["Perilla","Mentha","Lavandula","Thymus","Rosmarinus","Salvia"] Lamium
06 solanaceae ナス科 ナス科は、ナス、トマト、ジャガイモ、タバコなどを含む科です。 Solanales ["Solanum","Lycopersicon","Capsicum","Nicotiana","Petunia"] Solanum
07 orchidaceae ラン科 ラン科は、コチョウラン、カトレア、デンドロビウムなどを含む大きな科です。 Asparagales ["Phalaenopsis","Cattleya","Dendrobium","Vanda","Cymbidium"] Orchis
08 liliaceae ユリ科 ユリ科は、ユリ、チューリップ、フリチラリアなどを含む科です。 Liliales ["Lilium","Tulipa","Fritillaria","Erythronium"] Lilium
09 fagaceae ブナ科 ブナ科は、ナラ、ブナ、クリなどの落葉樹を含む科です。 Fagales ["Quercus","Fagus","Castanea","Castanopsis"] Fagus
10 betulaceae カバノキ科 カバノキ科は、カバ、ハシバミ、ハンノキなどを含む科です。 Fagales ["Betula","Corylus","Alnus","Carpinus"] Betula
11 sapindaceae ムクロジ科 ムクロジ科は、カエデ、ムクロジ、ライチなどを含む科です。 Sapindales ["Acer","Sapindus","Litchi","Dimocarpus","Aesculus"] Sapindus
12 rutaceae ミカン科 ミカン科は、ミカン、レモン、ユズなどの柑橘類を含む科です。 Sapindales ["Citrus","Ruta","Murraya","Phellodendron"] Ruta
13 malvaceae アオイ科 アオイ科は、アオイ、ワタ、ココアなどを含む科です。 Malvales ["Malva","Gossypium","Theobroma","Hibiscus","Abelmoschus"] Malva
14 brassicaceae アブラナ科 アブラナ科は、キャベツ、ダイコン、ナズナなどを含む科です。 Brassicales ["Brassica","Raphanus","Capsella","Wasabia","Arabidopsis"] Brassica
15 apiaceae セリ科 セリ科は、ニンジン、パセリ、セロリなどを含む科です。 Apiales ["Daucus","Petroselinum","Apium","Foeniculum","Coriandrum"] Apium
16 ericaceae ツツジ科 ツツジ科は、ツツジ、ブルーベリー、ツガなどを含む科です。 Ericales ["Rhododendron","Vaccinium","Erica","Arctostaphylos"] Erica
17 cucurbitaceae ウリ科 ウリ科は、キュウリ、カボチャ、スイカなどを含む科です。 Cucurbitales ["Cucumis","Cucurbita","Citrullus","Luffa","Momordica"] Cucurbita
18 araceae サトイモ科 サトイモ科は、サトイモ、スイセン、クワズイモなどを含む科です。 Alismatales ["Colocasia","Zantedeschia","Alocasia","Epipremnum","Anthurium"] Arum
19 moraceae クワ科 クワ科は、クワ、イチジク、イチョウなどを含む科です。 Rosales ["Morus","Ficus","Artocarpus","Broussonetia"] Morus
20 arecaceae ヤシ科 ヤシ科は、ヤシ、ココヤシ、デーツヤシなどを含む科です。 Arecales ["Cocos","Phoenix","Elaeis","Metroxylon","Areca"] Areca

植物の科名(Family)と属名(Genus)は、植物分類学における中間的な分類階級であり、植物の系統関係を理解する上で極めて重要な役割を果たしています。科名はラテン語の語尾「-aceae」で統一されており、それぞれの科を代表するタイプ属(type genus)の名前に由来しています。

現代の植物分類では、APG IV体系(Angiosperm Phylogeny Group IV、2016年発表)が広く採用されています。この体系では、被子植物は64目416科に分類されており、形態学的特徴だけでなくDNA分子系統学的な証拠に基づいて分類されています。従来のエングラー体系やクロンキスト体系とは大きく異なる点も多く、植物の進化的な関係性をより正確に反映しています。

日本で身近な植物科としては、バラ科(Rosaceae)にはバラ、リンゴ、サクランボ、イチゴなどが含まれ、園芸や果樹生産において重要な位置を占めています。菊科(Asteraceae)は被子植物で最大の科で、ヒマワリ、タンポポ、ヨモギなどが属し、約24000種が知られています。マメ科(Fabaceae)はインゲンマメ、ダイズ、ラッカセイなどの豆類を含み、根粒菌による窒素固定という生態学的に重要な特徴を持っています。

植物の属名は、種名と組み合わせて二名法(binomial nomenclature)を構成します。例えば、イネはOryza sativa L.と表記され、Oryzaが属名、sativaが種小名、L.は命名者リンネ(Linnaeus)の頭文字です。この学名体系は世界中で統一されており、言語や地域を超えた植物の正確な同定を可能にしています。

植物分類の知識は、農業、園芸、薬学、生態学など、さまざまな分野で活用されています。例えば、近縁の科に属する植物は、似たような化学成分を含むことが多く、薬用植物の探索において重要な手がかりとなります。また、適切な栽培管理や育種においても、植物の分類的な位置づけを理解することは不可欠です。