110番は、事件や事故が発生した際に警察へ緊急通報するための全国統一の電話番号です。この制度は1948年(昭和23年)10月1日に東京・横浜・川崎・名古屋・京都・大阪・神戸・福岡の8大都市で運用が開始されました。終戦直後の治安悪化に対応し、GHQ(連合国軍最高司令部)の指導のもと、市民が警察に迅速に連絡できる体制を整えるために設けられました。
当初は都市ごとに通報番号が異なっており、東京では「110番」だった一方、大阪や京都・神戸では「1110番」、名古屋では「118番」が使用されていました。この番号のばらつきは利用者の混乱を招き、番号を間違えるケースも少なくありませんでした。そこで1954年(昭和29年)7月1日の新警察法施行を機に、国家地方警察本部が警察庁に改組され、自治体警察が都道府県警察に集約再編されたのと同時に、全国一律で「110番」に統一されました。
「110」という番号が選ばれた理由には、ダイヤル式電話機の特性を活かした工夫があります。「1」はダイヤルのストッパーまでの回す距離が最も短く、緊急時に素早く回すことができます。一方「0」は距離が最も長く、誤って電話をかけてしまうことを防ぐ効果があります。また、最後に「0」を回す数秒間は、通報者が冷静になるための時間にもなります。このように緊急性と安全性を両立させた設計が、70年以上にわたって受け継がれています。
現在の110番システムは、テクノロジーの進化とともに大きく発展しています。2007年には携帯電話からのGPS位置情報送信が義務化され、通報者の正確な位置把握が可能になりました。また2023年からは「映像通報システム」が運用開始され、通報者が画像や映像を送信できるようになり、より正確な状況把握が実現しています。年間約800万件に及ぶ通報を受け付け、55秒に1件の割合で利用される110番は、現代日本の治安維持において欠かせない社会インフラとなっています。