概要

WRB土壌分類参照基準群

WRB土壌分類参照基準群は、国際土壌科学連合(IUSS)が策定した世界土壌資源照合基準(WRB)における最上位の分類レベルです。2022年の第4版では、32の参照土壌群(Reference Soil Groups, RSGs)が定義されており、土壌の生成過程や特性に基づいて体系的に分類されています。この分類システムは、土壌地図の作成や国際的な土壌情報の交換において標準的な基準として広く活用されています。

土壌分類 WRB 国際土壌科学連合 参照土壌群 土壌学 ペドロジー
コード スラッグ 名称 概要 カテゴリ
HS histosol ヒストソル 厚い有機物層を持つ土壌です。 厚い有機物層を持つ土壌
AT anthrosol アンスロソル 長期間の集約的農業利用により改変された土壌です。 人為的影響を強く受けた土壌
TC technosol テクノソル 人工物や産業廃棄物を相当量含む土壌です。 人為的影響を強く受けた土壌
CR cryosol クリオソル 永久凍土の影響を受けた土壌です。 根の成長を制限する土壌
LP leptosol レプトソル 薄いか、礫を多く含む土壌です。 根の成長を制限する土壌
SN solonetz ソロネッツ 交換性ナトリウムを高濃度で含む粘土富化下層土を持つ土壌です。 根の成長を制限する土壌
VR vertisol ベルティソル 膨潤・収縮する粘土を高含量で含み、乾湿の交替がある土壌です。 根の成長を制限する土壌
SC solonchak ソロンチャック 可溶性塩類を高濃度で含む土壌です。 根の成長を制限する土壌
GL gleysol グライソル 地下水の影響を受けた土壌、または水中や潮間帯に存在する土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
AN andosol アンドソル アロフェンおよび/またはアルミニウムと有機物の錯体を含む土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
PZ podzol ポドゾル 下層土に有機物および/または酸化物が集積した土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
PT plinthosol プリンソソル 鉄の集積と再分配が見られる土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
PL planosol プラノソル 停滞水があり、急激な粒度変化を持つ土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
ST stagnosol スタグノソル 停滞水があるが、粒度変化がないか中程度の土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
NT nitisol ニティソル 低活性粘土、リン固定、多量の鉄酸化物、強い構造を持つ土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
FR ferralsol フェラルソル カオリナイトと酸化物が優勢な土壌です。 鉄/アルミニウム化学により区別される土壌
CH chernozem チェルノーゼム 非常に暗色でよく構造化した表土と、二次炭酸塩を持つ土壌です。 鉱質表土における有機物の顕著な集積
KS kastanozem カスタノゼム 暗色の表土と二次炭酸塩を持つ土壌です。 鉱質表土における有機物の顕著な集積
PH phaeozem フェオゼム 暗色の表土を持ち、二次炭酸塩がなく(非常に深い場合を除く)、高い塩基飽和度の土壌です。 鉱質表土における有機物の顕著な集積
UM umbrisol アンブリソル 暗色の表土と低い塩基飽和度を持つ土壌です。 鉱質表土における有機物の顕著な集積
DU durisol デュリソル 二次シリカの集積と硬化を持つ土壌です。 中程度に可溶な塩または非塩類物質の集積
GY gypsisol ギプシソル 二次石膏が集積した土壌です。 中程度に可溶な塩または非塩類物質の集積
CL calcisol カルシソル 二次炭酸塩が集積した土壌です。 中程度に可溶な塩または非塩類物質の集積
RT retisol レティソル 粗粒で淡色の材料が細粒で濃色の層に入り込んでいる土壌です。 粘土富化下層土を持つ土壌
AC acrisol アクリソル 低活性粘土を持ち、交換性アルミニウムが交換性塩基陽イオンより多い土壌です。 粘土富化下層土を持つ土壌
LX lixisol リキシソル 低活性粘土を持ち、交換性塩基陽イオンが交換性アルミニウム以上の土壌です。 粘土富化下層土を持つ土壌
AL alisol アリソル 高活性粘土を持ち、交換性アルミニウムが交換性塩基陽イオンより多い土壌です。 粘土富化下層土を持つ土壌
LV luvisol ルビソル 高活性粘土を持ち、交換性塩基陽イオンが交換性アルミニウム以上の土壌です。 粘土富化下層土を持つ土壌
CM cambisol カンビソル 中程度に発達した土壌です。 断面分化がほとんどない土壌
FL fluvisol フルビソル 層状の河成、海成、または湖成堆積物からなる土壌です。 断面分化がほとんどない土壌
AR arenosol アレノソル 非常に砂質な土壌です。 断面分化がほとんどない土壌
RG regosol レゴソル 顕著な土壌発達がない土壌です。 断面分化がほとんどない土壌

世界土壌資源照合基準(World Reference Base for Soil Resources、略称WRB)は、国際土壌科学連合(IUSS)が編集・管理する国際的な土壌分類システムです。2022年に発行された第4版では、32の参照土壌群(Reference Soil Groups、RSGs)が定義されており、世界中の土壌を体系的に分類するための共通言語として機能しています。WRBは土壌地図の作成や土壌データベースの構築において国際標準として広く採用されており、各国の土壌分類システムを相互に比較・対照するための重要な基盤となっています。

WRBの特徴は、土壌の形態学的特徴と土壌生成過程を重視した分類体系にあります。診断層位(diagnostic horizons)、診断特性(diagnostic properties)、診断材料(diagnostic materials)という3種類の診断基準を用いて、土壌の性質を客観的に評価します。32の参照土壌群は、有機物層の厚い土壌、人為的影響を受けた土壌、根の成長を制限する土壌、鉄やアルミニウムの化学的特性で区別される土壌、有機物が顕著に集積した土壌、塩類が集積した土壌、粘土が富化した土壌、そして断面分化の少ない土壌という大きなカテゴリーに整理されています。

土壌分類の実用的な価値は、農業生産性の評価、土地利用計画、環境管理など多岐にわたります。例えば、チェルノーゼムは世界で最も肥沃な農業土壌の一つとして知られ、ウクライナや北米の穀倉地帯を支えています。一方、ソロンチャックやソロネッツは塩類やナトリウムの問題を抱え、特別な土壌改良なしには農業利用が困難です。フェラルソルやアクリソルは熱帯地域に広く分布しますが、養分保持能力が低く、持続可能な農業には適切な管理が必要です。このように、土壌タイプを理解することは、その土地の潜在的な生産性や制約要因を把握する上で不可欠です。

気候変動と持続可能な開発の観点からも、土壌分類の重要性は増しています。ヒストソルやクリオソルは大量の有機炭素を貯蔵しており、その動態は地球規模の炭素循環に影響を与えます。また、土壌劣化や砂漠化の進行を監視し、適切な対策を講じるためにも、標準化された土壌分類体系は欠かせないツールです。WRBは国境を越えた土壌情報の共有を可能にし、グローバルな環境問題への対応を支援する基盤として、今後もその役割を拡大していくことが期待されています。