Nutri-Scoreは、フランス公衆衛生局(Santé Publique France)がパリ・ソルボンヌ・ノール大学のSerge Hercberg教授の研究に基づいて開発した、食品の栄養価を評価する包装前面表示システムです。このシステムは、消費者が店頭で瞬時に食品の栄養的な質を比較できるよう設計されており、A(濃い緑色、最も優れた栄養価)からE(赤色、最も劣る栄養価)までの5段階で表示されます。2017年にフランスで初めて導入されて以来、ベルギー、ドイツ、スペイン、オランダ、スイス、ルクセンブルク、ポルトガルの各国でも公式に採用され、欧州における栄養表示の標準として広く認知されています。
Nutri-Scoreの計算方法は、英国食品基準庁(FSA)が開発した栄養プロファイリングシステムを基礎としています。具体的には、100gまたは100mlあたりの栄養成分を分析し、ネガティブポイント(エネルギー密度、糖類、飽和脂肪酸、塩分)とポジティブポイント(果物・野菜・ナッツ類・豆類の含有量、食物繊維、タンパク質、菜種油・くるみ油・オリーブオイル)を算出します。最終スコアはネガティブポイントからポジティブポイントを差し引いた値となり、-15から+40の範囲で評価されます。スコアが低いほど栄養価が高く、-1以下がグレードA、0から2がグレードB、3から10がグレードC、11から18がグレードD、19以上がグレードEとなります。
このシステムの最大の利点は、複雑な栄養成分表示を理解することなく、同じカテゴリーの製品間で栄養価を簡単に比較できる点にあります。例えば、朝食シリアルを選ぶ際に、複数の製品のNutri-Scoreを比較することで、より健康的な選択を素早く行うことができます。また、食品メーカーにとっても、より良い栄養プロファイルを持つ製品を開発するインセンティブとなり、結果として市場全体の食品の質の向上に寄与しています。フランスでは2022年時点で約875社がNutri-Scoreを採用し、包装食品の約60%に表示されるまでに普及しています。
一方で、Nutri-Scoreにはいくつかの限界も存在します。このシステムは超加工食品の加工度を考慮せず、ビタミン、抗酸化物質、食品添加物なども評価に含まれていません。また、地中海式食事の伝統的な食品(オリーブオイルやチーズなど)が不利に評価される可能性があるため、イタリア、ギリシャ、ハンガリーなどの国々からは反対の声も上がっています。こうした課題に対応するため、2023年には科学委員会によってアルゴリズムの更新が発表され、糖分、塩分、食物繊維、タンパク質の評価方法が改善されました。フランスでは2025年3月から新しいアルゴリズムが段階的に導入される予定です。
Nutri-Scoreは、公衆衛生の観点から消費者の食品選択を支援する革新的なツールとして評価されています。このシステムを活用することで、消費者は日常の買い物においてより情報に基づいた健康的な選択を行うことができます。ただし、Nutri-Scoreは単独の指標であり、バランスの取れた食生活全体の中で考慮されるべきものです。製品の原材料リストや全体的な食事パターンと組み合わせて活用することで、より健康的な食生活の実現に貢献することができます。